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白い虹 2007年北極

内容詳細

白い虹 2007年北極

 北極圏を覆う海氷面積が、2007年、観測史上最小を記録した。それは、「今世紀後半までには北極圏の夏の氷は消滅するかもしれない」というIPCCの予測を上回るスピードだった。
  日本の海洋研究開発機構の島田浩二博士は、「今年の北極は地球環境にとって非常に重要な意味を持つ年になるだろう」と予告していた。博士は、6月の衛星写真から、海氷域の変化の兆しを読み取っていた。
  そこは、北極圏西部のカナダ海盆。もっとも早く温暖化現象が現れる北極で、「2007年何が起こったのか?」取材はその問いに答える。
  このドキュメンタリーは、07年の6月末から約1ヶ月、この海域を調査した砕氷船ルイサンローラン号に同乗、密着取材した記録である。
  同時に、高潮による浸食で住民が移住を迫られているアラスカのシシマレフ村も取材、北極温暖化が、現実にどんな被害をもたらしているかを取材している。

調査航路

 ルイサンローラン号は、7月26日に出航した。調査の注目箇所は4点。北極温暖化の引き金となった太平洋水が流入するベーリング海峡近くのポイト・バロー沖、2006年巨大な海面が出現した“ノースウインド海嶺”、調査海域最北端の北緯80度、そしてカナダ多島海のバンクス島西部沖だ。
研究スタッフは、カナダ国立海洋研究所、アメリカウッズホール海洋研究所、アラスカ大国際北極圏研究センター、日本の海洋研究開発機構などの毎年北極海を調査しているスペシャリストたち。作品には、北極の危機を的確にとらえた空撮、水中カメラによる氷の姿など、臨場感あふれる映像が凝縮されている。

砕氷船サンローランをガイドに

砕氷船サンローラン号

 調査は、はじまりから予定のコース変更となった。バンクス島西部沖の<激変>が始まっていたからだ。
 バンクス島西部沖は、かねてから研究者や砕氷船乗組員の間で「難攻不落の氷の砦」と知られている。しかし、偵察ヘリを問題の海域飛へとばすと、氷盤に無数の亀裂が広がっていた。アイスオブザーバーも、「こんな状況ははじめてだ。」と驚きを隠さない。かつて砕氷船を拒否した海は、氷が、融ける運命を待つかのようにボロボロになって流れていた。  

北極温暖化の引き金を引いた太平洋の水

 そして、北極海に太平洋の水が入るアラスカのポイントバロー沖の水温は7度もあった。これまでは高くても4度だから、異常に高いと言える。
  北極温暖化の引き金を引いたのは、この太平洋の水だ。始まりは10年前。1997年、太平洋からの水が平均値から4℃も上昇し、この周辺の海氷が前年の60%も激減してしまった。

温暖化の被害はここに・・シシマレフ村

シシマレフ村 ベーリング海峡に近いアラスカのシシマレフ村は、全村の移住を決めた島だ。秋の10.11月に海が凍らず、海岸が高波の浸食を受け、この数年被害が相次いでいるからだ。村長は、高潮の恐怖を、侵食で転落した家屋を前に語る。
海に船を出して海水温を測ると10.9度と確かに高い。

北極温暖化の「グランドゼロ」は・・・・・

 いっぽうサンローラン号は、重要ポイントの一つ、去年巨大な海面が出現した“ノースウインド海嶺”へと近づいていた。今年は、どうなっているのか?
取材班は、アイスオブサーバーに、氷の年齢の見分け方を教えられた。平らでメルトポンドの黒いのが1年氷。美しい水色の水たまりが3歳以上の多年氷。
サンローラン号 そして融けて崩れたのがRotten。のちのち、この腐った氷という単語は、頻繁に聞くことになる。

 ノースウインド海嶺に入る直前、サンローラン号は、薄い氷に周囲をつつまれた。
「太平洋水が入ってきて冬に氷の成長を妨げている。今その場所にいる。」と話す海洋研究開発機構の伊東研究員。すすむごとに氷は減り、ついに砕氷船であるサンローランは、氷のない海水面をすべるように走っていた。これから毎年海面が開く可能性は高い。
  作品では、1989年のカナダ多島海域の映像と比較。いかに07年の氷が薄いかが分かる。
  そして撮影中、水面に奇妙な光景を目撃する。開いた海面に薄い氷が張っていたのだ。その理由とは・・・?
北極研究の第一人者でカナダ国立海洋研究所のエディ・カーマックは、この現象をこう見ている。
「(氷崩壊の)ドミノ倒しの引き金は引かれてしまった・・・。」

どこまでも続く1年氷。北緯80度にアザラシ、白熊を呼び寄せた

水面下の氷 北極点に近い北緯80度付近にのぼる。しかし、砕氷船にとって柔らかい1年氷がいつまでも続く。
  水中カメラは、腐った氷から融けた淡水と海水が塩分の違いで層をなしているゆらぎを写し出した。北極温暖化のメカニズムの、後戻りもできない状況がひしひしと伝わる。

 おなじころ、科学者たちに焦りの色が見え始めていた。氷の観測装置、ブイを設置する3m以上の分厚い氷盤がなかなか見つからなかったからだ。3度目の偵察でようやく丈夫な氷盤が見つかり、取材班も氷上におりた。
氷上観測機設置作業  取り出した氷柱に穴をあけて温度を測ると、固い部分でようやくマイナス0.6度。海水は-1.8度で結氷するため、すでにこの氷も溶けはじめている状態であることが分かる。

 氷の割目からアザラシが首を出した。北緯80度近い氷だが、呼吸する穴もあり、食べるものも集まってきているようだ。すでに生物環境が変化しているのだ。

崩壊へのステージに突入した温暖化メカニズム

バンクス島北西部沖の海域 8月18日、北緯75度西経128度。最大のポイント、バンクス島北西部沖の海域に入る。
  砕氷船でも入ることが難しいとされた海域。
  しかし目の前に広がったのは、広い海水面と完全に氷盤が崩壊した姿だった。
  海洋研究開発機構の島田浩二博士は、「海氷が回転して動く速度が、急激に早まっている」と氷崩壊のメカニズムが第IIステージへと突入したことを指摘する。
 

北極の氷 もはや北極の氷の質が変わってしまったのか。
取材班は、水中カメラで消滅寸前の氷の断末魔を美しい映像でとらえることに成功した。

シシマレフの恐怖は、凍土が融けること

 この10年でシシマレフの海も、変化している。高潮は3日間も続いた。
高潮で海水が村を水浸しにすることを、なにより村長が心配する原因は、島を支える地盤が凍土であることだ。その凍土を掘って、温度を測る。?0.6度。ここに、暖かな海水が打ち寄せると、大規模な陥没が起こってしまう。
  この島にとって温暖化は、迫り来る恐怖なのだ。

白い虹は、温暖化がもたらした北極の新しい風景

 バンクス島沖の取材中、白い虹を何度か撮影した。白い虹は、太陽が輝き、露出した海面から霧が立ち上るとき短い時間あらわれる。まさに北極の温暖化のシンボルのようだ。
 航海の終わり、ファースト・サンセットを迎えた。まもなく零下50度の冬がくる。

白い虹
 
ナレーター
竹房 敦司
リポーター
海洋ジャーナリスト 永田 雅一
制作
朝日放送
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